
イベント
カルチャーのある事業をどうつくる? 自分起点で動ける組織の育み方【後編】——木村祥一郎×木村まさし×飯田圭
木村祥一郎×木村まさし×飯田圭の3者で「カルチャーのある事業」について話しました。
「グローバルニッチを目指す」
「最高でも最安でも最速でもなく、最愛になれるようにする」
2025年1月に開催されたトーク「カルチャーのあるビジネスを考える」では、名古屋市の自転車店Circlesでディレクターを務める木村まさしさんと、木村石鹸の4代目・木村祥一郎がそれぞれに、自らの事業で「大事にしたいこと」を守りつつカルチャー(文化)として育むヒントを明かします。
ビジネスとして成立をさせながら、いかに「ブランドらしさ」「会社らしさ」のようなものを育てていくか。【後編】でも引き続き、Micro Hotel ANGLEオーナーの飯田圭さんのファシリテートのもと、ゲスト2人の実践を聞いていきます。
前編:https://www.kimurasoap.co.jp/a/c/journal/l/event/talkevent2401
カメラ:にしうら
愛されたいお客さんに、より深く愛してもらうには?
ブランドを好きになってくれそうな人に向けて、事業を展開するCirclesと木村石鹸。その姿勢が、自分の大事にしている軸——木村まさしさんであれば「納得できる事業を」営むこと、木村祥一郎であれば「一緒に仕事をしたい人と」働くこと——をも可能にしてきたと2人は話します。
ならば、お客さんからの愛が深まるような取り組みができると、より豊かなカルチャーが未来に引き継がれていくはずです。お客さんと社員の関係づくりにおいて、2人が特に意識していることはあるのでしょうか?
木村(祥)「社員に僕が伝えているメッセージは割と明快で、『楽しそうに一生懸命働くこと』。結局、そういう姿勢が感じられる会社のことを、みんな好きになると思うんです。例えばアイドルでも、推しグループのメンバー仲がいいと結構うれしいじゃないですか(笑)。もちろん、それって作為的に見せても絶対ダメで、自分たちが真剣に取り組んでいるから、結果的に漏れ出ちゃうくらいの感じ。そういう会社をつくれたら、一番愛されるんじゃないかと考えています」
ゲストの木村まさしさん(左)と、木村祥一郎(中央)、ファシリテーターの飯田圭さん(右)
木村(ま)「わかります。自転車のように趣味性が高い製品の場合、スタッフが本気で遊べば遊ぶほど、その面白さがお客さんに伝わっていくんです。なのでうちは、僕が関わるようになってスタッフの休みを週1日から2日に変え、自転車で遊びに行ったことを発信するなら経費も出すことにしました。絶対に売上は下がらないだろうと思ってやったら、結局1.5倍になって。スタッフが実際に遊ぶ姿を見せると、お客さんからも『どこに行ったんですか?』と声がかかったり、お店での話題がすごく増えました」
売り手が本当にそのアイテムを使うことで、お客さんに伝えられる情報がどんどん濃くなっていく、と語る2人。それは同時に、自分が本気で「使いたい」と思えるアイテムを企画していくことにもつながっていきます。
木村(祥)「うちは製品をつくるとき、『大切な人に自信を持ってプレゼントできるか』という基準をかなり大事にしています。マーケティング的発想で『このポジションにこういう商品があれば売れる』ではなく、あくまで自分が起点ですね」
木村(ま)「それってすごく大事ですよね。模倣されにくいし、好きでつくったものだから、誰よりも自分が売りたくなる」
木村(祥)「そう。だから木村石鹸には廃盤が基本なくて、あるのは担当がいなくなったときだけなんです。なかなか売れないと『自分の感覚っておかしいのかな』とも感じちゃうけど、それでも人の思い入れがある商品だからこそ、何とか売りたいと思ってみんな考え続けてくれるんですね」
カルチャーをどう組織の中に浸透させていけばいい?
飯田「経営者だけの考えだけでなく、実際に組織全体としてそうした姿勢を貫けているのがすごいなと、話を聞いていました。個人でやるならまだしも、チームで実践していくときに、どうすれば大事にしたい価値観をみんなで長く共有し続けられるのかなと」
トークの中で、そう悩みを打ち明けた飯田さん。創業時から勢いで走ってきた部分があり、少し前にミッション・ビジョン・バリューを策定するなど、目指すものの言語化にも取り組んでいるといいます。2人はどうなのでしょうか?
木村(ま)「『世界一かっこいいバイクショップにする』を掲げているのと、社員には『遊ぶお金ほしさにやって』とストレートに伝えています(笑)。そのくらいわかりやすくていいかなと。ただ、趣味性が高い仕事だけに、好きな人はいくらでも時間をかけられてしまうので、納期を守ることは僕も大事にしていますね。仕事としての数字をあえて意識すると、結果もっと遊べるようになる。そうやって、継続できるようにすることが大事だと考えてます」
木村(祥)「ミッション・ビジョン・バリューは、ほしいとも言われるんですけど、木村石鹸らしくない気がしてつくっていません。ただ、自分たちでありたい姿を考えることは大事だと思っていて、社員みんなでどんな会社がいいか、議論してもらったことはあるんです。そこで出てきた言葉が、『社員が一番自慢できる会社』。これって究極ですよね。どんな事業がいいか、どんな商品だったらいいかも、全部そこから考えたらいいじゃないかと僕は思いました」
実際に木村石鹸の経営においては今、事業の内容のみならず、「数字」についても社員に任せていると話す木村祥一郎。もちろんそれは、売上や利益のデータを軽視することではありません。
ただ、オープンになっているさまざまな数字を見て、どうするかを考えるのは社員一人ひとりだということ。そこには、「自分で考え、納得したことに取り組んでうまくいくのが一番いい」と考える木村の思いがあります。
木村(祥)「例えば、ある社員が一昨年に福袋の企画を初めてやったんです。予想以上に売れたんですが、次に配送オペレーションを見直しながら企画したところ、昨年は全然売れなくて。そのことに対して僕は何も言っていないけど、本人は原因を徹底的に分析して、お客さんが喜んでくれる方法をとことん考えて、結果今年はものすごく売れました。会社がやったのは、その仕掛けが実行できる環境を整えただけ。こういう事例が増えているのが、僕はとても嬉しいんです」
経営する側の思いは、常に理想の結果として表れるわけではありません。任せて失敗するケースもないわけではないとしつつ、「それでも数字が悪かったら悪かったなりに、社員のみんなが何とかしなきゃと自分たちで考えてくれる」とこの日、木村は語りました。
お金も数字も大事だし、結果の前にどういうプロセスがあったかも大事——そんなバランスの中で、関わる一人ひとりの楽しさが表現される組織にしていく。そのことが、「ブランドらしさ」「会社らしさ」を育む大切な視点になりそうだと感じるトークでした。